老後の「無理のない働き方」で、実際いくら稼げるのか
では、老後の「無理のない働き方」とは、具体的にどのようなもので、いかほどの収入が見込めるのでしょうか。
老後においての「無理のない働き方」とは、個人によって大きな幅があるものですが、ここでは週2~3日、あるいは1日4~5時間程度の短時間勤務を想定します。
1週間にすると20時間程度の勤務となり、体力的な負担が少なく、重い責任やノルマから解放された働き方です。
東京都の最低賃金(2025年10月現在で1226円)を基準に考えると、シニア層を積極的に採用している職種では、時給1250円~1600円程度が現実的な相場となります。
具体的な職種と月収例をいくつか見てみましょう。
ケース1:マンションの管理人(日勤・短時間)
仕事内容:受付、簡単な清掃、巡回、業者対応など
時給目安:1250円~
働き方:週3日、1日5時間
月収例:時給1,300円×5時間×12日=月額78,000円
(特徴)比較的体力の負担が少なく、自分のペースで働きやすいのが魅力です。
ケース2:スーパーやコンビニの短時間パート
仕事内容:レジ、品出し、清掃
時給目安:1250円~1400円(早朝・深夜は割増あり)
働き方:週3日、1日4時間
\月収例:時給1300円×4時間×12日=月額62400円
(特徴)地域社会との接点があり、「ありがとう」と直接言われる機会も多い仕事です。
ケース3:軽作業(倉庫内ピッキング、梱包など)
仕事内容:リストに基づいた商品の仕分け、梱包、検品
時給目安:1300円~1400円
働き方:週2日、1日6時間
月収例:時給1300円×6時間×8日=月額62400円
(特徴)接客が苦手な方でも、黙々と自分の作業に集中できます。
ケース4:シルバー人材センターで斡旋される仕事
仕事内容:公園や公共施設の清掃、駐輪場管理、簡単な事務補助など
収入形態:「配分金」と交通費など(時給換算で1000円~1200円程度が目安)
働き方:週2~3日、1日4時間程度
月収例:1日4500円×10日=月額45000円
(特徴)地域の社会貢献的な意味合いが強く、無理なく働けるよう配慮されています。
上記の通り、一般的に「無理のない働き方」で得られる収入は、月額5万円~8万円程度が一つの目安となります。
現役時代にフルタイムで働き、大いに稼いでいた方にとっては「たったそれだけか」と思う収入額かもしれません。しかし、この「月額5万円~8万円」が老後の家計に与えるインパクトは絶大なのです。
例えば、年金収入だけでは毎月5万円の赤字だった家計が、月6万円の収入を得ることで、毎月1万円の黒字に転換します。これは、貯蓄を取り崩す生活から、貯蓄を維持(あるいは微増)できる生活へと変わることを意味します。
この経済的な安心感が、「たまには孫におこづかいをあげよう」「少し贅沢して美味しいものを食べに行こう」といった心のゆとりにつながります。
なお、65歳以上の方の場合、「在職老齢年金」の制度により、給与と年金の合計月額が51万円(2025年度現在)を超えると年金の一部がカットされる場合があります。
しかし、上記のような月額5~8万円程度の働き方であれば、基本的に「働き損」になる心配はないと言えるでしょう。